永京地下鉄10000系

登場経緯

 永京都地下鉄蓮庭線の開業に備えて開発された車両である。登場したのは1972年。蓮庭線が開業する1979年までは試作車両が別の路線で活躍していた。

 2002年からは新しい保安装置を導入するための工事が行われ、その後2006年からVVVFインバータ制御化が進められた。後継車の導入により、2020年3月に引退した。

当時の最新技術を採用

 地下鉄蓮庭線は「近未来の地下鉄」を目指して設計された。結果完成したのはごく普通の地下鉄だったが、10000系の設計に目指していた方向性の名残を知ることができる。

 まず保安装置だが、ATCを開業時から使用している。このATCは自動運転に備えた設計だった。自動運転とはいえ、完全な自動運転ではなくあくまでも乗務員が乗務するタイプの自動運転。それでも運転士に余裕ができるため、運転士が車掌の代わりを務めることができるとして期待されていた。運転士が車掌の代わりを務めれば、人件費が削減できるというわけである。

 10000系の乗務員室後には機械を搭載するスペースがあるが、このスペースにATCなどの装置が詰め込まれている。その一部は空洞となっているが、この空洞部分に自動運転関係の装置を搭載する予定だったそうだ。

 最新技術の採用はこれだけではなく、電機子チョッパ制御や永京都地下鉄で初めてとなるオールステンレス車体なども採用された。永京都地下鉄は永京都が運営していた関係で、それらの装置や車体は複数のメーカーに発注されている。

ハイブリッド電車??

 「ハイブリッド」といっても、決して走行システムのことではない。10000系は複数のメーカーが協力して設計した電車であるため、メーカーごとの設計思想が入り混じった電車となっているのだ。

 前面デザインは永急車輛製作所(当時)、車体設計は中部車輌製造、台車は関西製作所、走行機器は茨原製作所が担当した。私鉄でも1つの形式を2つのメーカーが担当することはあるが、4つのメーカーが担当することはほぼない。

 車両自体の製造は前記の4メーカーと津喜重工業(当時)が共同で行った。そのため、中部車輌製造が設計した車体を関西製作所が製造することもあった。ただし、製造メーカーによる一部設計の違いは認められておらず、度の車両も元の設計通りに製造されている。

増結中間車

 蓮庭線は輸送力を増やすため、1990年代に一部の電車を8両から10両に伸ばした。その際、従来の8両編成を伸ばすために増結中間車が製造されている。

 増結中間車の設計は津喜重工業が行った。ただ、中間車の設計には「車体の見た目を従来車と変えないこと」「台車・走行機器も変えないこと」「極力従来車と同じ寸法の部品を使用すること」という条件があった。

 津喜重工業の設計チームはこれらの条件をクリアしつつ、新しい設計も取り入れている。車体は「見た目を変えない」という条件があったが、分かりにくいところを変更した。骨組みは両得80系をベースとしているほか、窓も多少大型化されている。また、内装は大きく変更された。

 増結中間車の内装は、座席の色を除いて両得80系にそっくりだ。内壁は白色となり明るい印象に。そして片側のドアにはLEDの案内表示機が設置され、電車の位置がわかりやすくなった。

更新工事

 2002年から新しい保安装置への更新を行っていた10000系。奇しくもこの年は1972年の試作車デビューからちょうど30年の節目であった。そろそろ新型車両に置き換えられてもおかしくない時期だったが、車両によってはまだ新しく、増結中間車は製造から10年も経っていなかった。

 2005年には蓮庭線の保安装置が更新。従来乗り入れられなかったVVVF車も乗り入れるようになった。そして翌年に発表されたプレスリリースは、多くの鉄道好きに衝撃を与えることになる。

 「10000系の走行機器を、省エネタイプに更新します」

 量産車の登場からすでに26年。車内設備などが時代遅れになっているのにも関わらず、更新工事が行われると発表されたのだ。10000系の更新は、プレスリリース通りに制御装置の交換のみだった。車いすスペースの設置も行われたとはいえ、内装はほぼデビュー時のままである。この更新工事は2008年に完了。この工事の完了で、今後数年間の活躍が約束されたと言えるだろう。

置き換え

 2017年3月25日から運行を開始した63系は、10000系全車両の置き換えを目的に導入が進められ、2020年に導入が完了した。これに伴い、10000系は2020年に引退し、一部の車両が地方私鉄に譲渡された。


※当ページの内容はフィクションです。

当ページ最終更新日 2022年03月19日

当ページ公開開始日 2022年03月19日