10系910番台

登場の経緯

 両得電鉄では、2003年度からダイレクトドライブモーター(DDM)の試験を開始しました。このモーターは、ギアボックスを介さずに直接車軸を動かすもので、低騒音、高効率、メンテナンスフリー化が達成できるとされました。2010年を目処に実用化したいということで、まず草深検車区(当時)所属の50系8両編成に1両試験車両を連結しました。

 試験車両は50系の電動車を改造したものです。電動機をDDMに変更したほか、それを制御するVVVFインバータ制御装置も搭載しています。従来型の車両に比べて低騒音で細かな制御ができるということでしたが、この試験はあくまでデータ収集が目的でした。なお、両隣には従来型の車両が連結されており、速度が上がると両隣の車両の音がうるさく聴こえたようです。津古線をメインに運行されていましたが、時折上谷駅から遠山原駅まで向かう急行運用に入ることもありました。

 2005年度で50系による試験は終わりましたが、この試験結果を元に新型車両が開発されることになりました。新型車両は、車体こそ10系0番台と同じ設計ですが、走行機器にはDDMなど最新のものが採用されており、また永久磁石同期電動機(PMSM)を初めて採用した車両にもなりました。

 登場したのは2006年のこと。「10系910番台」として草深総合車両センターに8連1本が配置され、11月より津古線で運用入りしました。なお、同じタイミングでNR永津線にもDDMを採用した連接構造の車両が投入されたのですが、両得の方が先に営業運転を開始しました。

 さて、10系910番台は試作車という位置付けで、車内設備にも試験的な装備が搭載されています。最もわかりやすいのは可変座席です。座席の中央部を回転させることで、ロングシートからセミクロスシートに変更できる座席です。後に10系500番台などに採用されたデュアルシートとは異なり、1両あたりの着席定員を減らさずに済む構造でしたが、座席のクッション性がなく座り心地が悪いという欠点もありました。

異端車に

 10系910番台が登場した翌年に、10系0番台をグレードアップした「10系100番台」が登場しました。この車両はそれまでの車両の問題点を改善し、また座席のクッション性を高めるなどした車両ですが、DDMはまだ試験段階ということで採用されませんでした。

 一方で910番台は2010年までに様々なデータを収集し、検査面やコスト面でのメリットがあるかが確認されましたが、最終的には従来型の車両を導入し続けたほうがよいとのことでDDMの採用は見送られることとなりました。2012年度からは津古線にも10系100番台が導入され、1編成のみの910番台は異端車となりました。

現在

 2006年のデビュー以来、長年唯一無二の存在として津古線で活躍してきた10系910番台ですが、2017年アーバンループ線開業や、若葉の森線直通開始、さらに2022年の花浜線延伸などで活動範囲を北萩線にも伸ばしました。所属も新設された福増総合車両センターに変更され、時折機器更新されるという噂も流れますが、今もDDMを搭載したまま活躍しています。


※このページの内容はフィクションです※

当ページ最終更新日 2022年05月19日

当ページ公開開始日 2022年05月19日