結急30系(通り抜けできない)

イラスト:道楽千路氏

 結急電鉄30系は、両得電鉄時代の2016年3月12日にデビューした通勤型車両です。大きく分けて、前面のドアを中央に設け、異なる編成で連結した時に通り抜けできるタイプと、ドアを前から見て左に寄せているため通り抜けできないタイプの二種類があります。

 最新のシステムを多数採用したほか、デジタルサイネージを増設(ドアだけでなく窓の上にも設置)することで、より多くの情報を乗客に提供できるようにしました。

 このページでは「2編成連結時に通り抜けできない」タイプの30系について解説します。

仕様

 本系列は、80系100番台以降の通勤型車両に適用されている設計思想を引き継ぎつつ、新規に開発した技術やNR今北で開発された技術を組み合わせた車両として開発が進められた。特に列車情報管理システム「IN-RIMS」は、NR今北の新型通勤型車両「N1604系」に搭載されている「IN-NIMS」を両得電鉄向けに最適化したシステムで、エネルギーコストやメンテナンス低減を実現している。

 車両番号は「1」からの付番としており、奈原・木滝神宮(津古線向けは津喜・八田山)方から「31」「32」の順に付番されている。同じ編成の下2桁は同じ番号で揃うようになっている。

車体構造

 車体長は19,500mm、車体幅は2,800mm、連結面間距離は20,000mmとなっており、片側4箇所の両開き扉を有している。100番台以降の車両は、従来の10系と同じく軽量ステンレス構体であるが、雨どいが外側に出ない新しい車体断面を採用した。この構造は津喜車両製造が2012年に開発した「Sphere(スフィア)」の設計に準じたものであり、NR今北のN1604系などでも同じ構造の車体が採用されている。

客室内装

 0番台では、既存車両において中吊り広告が設置されている部分に17インチLCDを二画面設置し、中吊り広告の代替とした。一方で当形式より先に登場していたNR今北のN1604系は、通路上ではなく窓上にデジタルサイネージ(21.5インチLCD)を設置しており、「統一した方がいい」という当時の上層部の方針転換により、10番台からは窓上にデジタルサイネージを設置する形態に改められている。通路上のデジタルサイネージは、既存車両と同じく中吊り広告に置き換えられた。

 窓上に設置されたデジタルサイネージは、同じサイズのものが三画面横に並んでおり、この3画面を一つの画面のようにして使用することも可能である。また、それぞれの画面に別の静止画広告を表示させる機能も有しているが、広告契約の都合で実際に使用されたことはない。原則として3画面1セットで広告を展開する決まりとなっている。

 ドア開閉装置には、ラック・アンド・ピニオン方式の電気式戸閉装置が採用されている。この装置は従来の電気式戸閉装置と異なり、戸閉状態でも常時お互いの扉が押しつけ合う構造となっている。ロック装置に隙間を設けていることから、走り始めるまでは挟まれたものを比較的引き抜きやすいようになっている。腰掛けは一部を除き10系100番台と同じ設計の座席を採用しているが、2000番台に関しては津喜製作所のモノレール、新交通システム向け座席「T-seat」を新たに採用した。

 「T-seat」は、座席の角度を人間工学に基づき最適化した座席で、従来の座席よりも奥行きが多少ある。また、袖仕切りは2018年度と2019年度に導入された車両の場合、一部が半透明になっている。2020年度から導入された車両は、再度形状を変更したが、半透明部分が無くなっている。

電源・制御装置

 制御装置は半導体素子にSiCモジュールを適用したVVVFインバータ制御とし、高速域でのスイッチングを従来の1パルスから27パルスへ変更することで、主電動機の損失を低減させて省エネルギー化した。1台の制御装置で主電動機4台を制御する1C4M構成となっている。(10系100番台は、1C4M構成の車両と1C8M構成の車両が混在していた)

 制御装置は電動車に搭載されており、1両ごとに制御装置が搭載されている。一方で、パンタグラフが搭載されている車両と搭載されていない車両(準備工事のみ)が混在しており、パンタグラフ搭載車は「M1」車、パンタグラフ非搭載車は「M2」車として扱われている。これは他の路線への転出時、編成組み替えを行いやすいようにするための設計である。

 0番台では「フルSiCタイプ」の制御装置(津喜電機製)と、「ハイブリッドSiCタイプ」の制御装置(永浦製)の2種類を採用したが、10番台以降は「フルSiCタイプ」の津喜製作所製制御装置が採用されている。

 ブレーキ方式は、津喜電機→津喜製作所製の回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキを採用している。常用ブレーキは、IN-RIMSによる編成ブレーキ力管理システムで制御を行っており、回生ブレーキを優先使用することで、省エネルギー運転と基礎ブレーキの摩耗量低減を図った。

 主電動機は、永浦が原設計を担当している。NR今北のN1604系と同じ設計の全閉式外扇形かご形三相誘導電動機を採用しており、電動車1両あたり4基搭載されている。定期的な内部清掃が不要な省メンテナンス構造であり、1時間定格出力は140kWに変更されている。(10系100番台は190kWだったが、140kWでも問題ないと判断された)

情報制御装置

 10系から搭載されている列車情報管理装置RIMSは、従来のモニタ装置を進化させたものであったが、本系列はさらに機能拡張した「IN-RIMS」を導入した。このIN-RIMSは、RIMSが各車にある中央・端末演算ユニットによって演算・制御を行う分散方式だったのに対し、各種演算機能編成の中央ユニットに集約した集約制御方式を採用している。従来各車に配置されていた端末装置は、IN-RIMSではデータ伝送機能に特化したユニットとなった。

 主な特徴としては、通信インターフェースをEthernetに変更することで、データ通信速度が従来の10倍以上に向上されていることと、WiMAX通信を利用して、各種データを地上システムにリアルタイム送信し、それを活用することが可能になっていることである。特にデータ通信速度に関しては、トレインチャンネル用の広告コンテンツや、車両機器モニタリングデータなど、大容量のデータを扱えるようになっている。なお、車両のデータをリアルタイムに地上システムに送信できることから、これを車両や機器の劣化状態の推測に活用している。

10番台

 一足早くデビューした0番台(通り抜けできるタイプ)をベースに、前面の貫通扉を前から見て左に寄せた「2編成連結時に通り抜けできないタイプ」として2016年12月10日にデビューしたのが10番台です。

 貫通扉を左に寄せたのは、すでに活躍していた10系100番台と同様に、運転台スペースを広く確保するためです。

 車両のデザインは津喜デザイン研究所が手がけており、0番台とは異なり30系オリジナルのデザイン「シティーアイコン」となりました。前面にラインカラーを配し、乗り間違いしにくいデザインとなりました。

 10両貫通編成3本が両得本線系統(当時)、8両貫通編成3本が津古線に導入され、うち10両タイプは永京都市地下鉄広鐘線(現在の地下鉄津喜線)、NR信濃・両武線、雪松急行電鉄にも乗り入れています。

 なお、31-11Fと31-14Fは特別仕様車となっており、車体外装が特別デザインとなっているほか、座席がすべてハイバッグシートとなっている。

100番台・500番台

30系100番台

37-1XXはロング・クロス転換座席車。

 2017年7月に営業運転を開始したグループです。10番台の車体材質がアルミ製だったのに対し、100番台と500番台ではステンレス製に変更されました。ステンレス車体は、当時すでに走っていた10系100番台とは異なる新しい設計とされ、レーザー溶接を採用することで強度が増したり軽量化されたりしています。

 「100番台」は、津古線用の車両として登場しました。8両編成で、古林方から4両目となる37-1XXはロング・クロス転換座席を搭載している車両です。この車両は、ロングシートとクロスシートを状況に応じて使い分けることが可能で、2018年3月10日のダイヤ改正から「プラスカー」としての運用も開始されました。(なお、2021年3月14日ダイヤ改正でロング・クロス転換座席車両のプラスカー運用は廃止されています)

30系500番台

 「500番台」は、津喜線向けの車両として登場しました。10両編成で、永京方から4両目となる37-5XXは2階建て車両となっています。2階建て車両は、2018年3月10日のダイヤ改正から「プラスカー」としての運用が開始されました。なお、プラスカーサービス提供前は、自由席車両として終日全運用で料金不要となっていました。また、2017年度に導入された編成のみ、奈原方の2両(31-5XXと32-5XX)がセミクロスシートとなっています。100番台とほぼ同じ設計ですが、500番台にはドアボタンが設置されています。(100番台は設置準備のみです)

37-5XXは2階建て車両。

 2018年度からは津古線向けも500番台として導入されるようになりました。なお、津古線向け編成に連結されているロング・クロス転換座席車両(37-1XX)は、ドアボタンが設置されている新仕様の「30系200番台(37-2XX)」として引き続き連結されています。また、両得本線(当時)向けの10連奈原方のセミクロスシート車は廃止され、一般車はオールロングシートとなりました。その他、内装では袖仕切りが新しいタイプ(一部が半透明になったタイプ)になりました。

2018年度以降に導入された車両の内装。

2018年度以降導入車内装。優先席付近の床がオレンジ色に変更された。

 2019年度も引き続き津喜線と津古線を中心に500番台が導入されましたが、このうち津古線向けに導入された編成の一部は、「特別仕様車」として背もたれを高くした座席を採用しました。この特別仕様車は、2019年12月25日から営業運転を開始しています。

30系500番台特別仕様車

今までと同じだが、違う

 2019年12月25日に運用を開始する30系特別仕様車は、今年度もすでに何本か導入されている30系500番台のマイナーチェンジ車両です。見た目は前の赤帯が細くなったことを除き、それほど変わりません。ではなぜ「特別仕様車」なのか。その秘密を探ります。

30系2000番台の試作車??

2020年には30系2000番台の登場が控えていますが、どうやらこの車両、30系2000番台に採用する設計をいくつか取り入れているのだそうです。例えば、プレスリリースで発表されている台車へのヨーダンパ取り付けや、ドア上LCDの21インチ化などが行われているほか、座席のハイバックシート化や細かい機能変更も行われている模様。

新たに採用された座席。かっこいいですね!!

 ハイバック化により従来よりも座り心地が良さそうな座席。しかしその座り心地は固めで、両得電鉄の車両ではSバネの入っていない10系0番台の座席並みの固さ。運行開始前日の内覧会にいたおっちゃんいわく、「30分程度の乗車に最適化されている」とのこと。この座席は来年度に登場する30系2000番台にも採用されるようですが、導入予定路線の八田山線は一時間以上のロングラン運用もあり、果たして利用客に受け入れられるかと言われると微妙。内部では「2000番台の座席はせめて今までと同じ柔らかさにできないか」という話があるとか。

 30系でハイバックシートといえば、従来の車両も先頭車の一部座席がハイバックシートでした。このハイバックシートは2011年から10系100番台で採用が始まったシートで、こちらは両得電鉄通勤車の中では群を抜く柔らかさ。長距離乗車でも苦にならない座席でした。しかし、製造が難しく個体差があることや、複数の座席がつながっているということで、汚損時に2、3席分ごっそり取り替えなければならないという苦労もあったようです。特別仕様車ではこれを改善し、座席は1席ごとに独立した設計となっています。汚損時は確かにピンポイントで取り替えられますが、検査などで座席を全部外す際は面倒くさいような気もしなくありません。

 さて、内装で変わったのは座席だけではありません。上を見上げると照明にカバーが。従来は蛍光灯が丸出しだったのですっきりとした見た目になりました。この照明はおっちゃんいわく、カバーを付けているのではなくて角形のLED照明を採用しているとのこと。見た目がいいのでこちらも2000番台に採用されるようです。ちなみに、従来の車両もこの照明に変えないのかと尋ねたところ「当面はそのままの予定」とのこと。

臨時電車として使いやすい設計??

 特別仕様車は前面の赤帯が細いですが、これは車両情報管理システムの仕様が変更されたことを表しているようです。特に編成の長さを安易に変えられるようになったそうで、システム上は10両編成から4両編成までに対応しているとのこと。そして何より驚いたのが「音響機器にこだわっている」という話でした。

 両得電鉄では10系0番台以来、NRなど他社でも使われている汎用の車内スピーカーを採用しています。ですがこれを永京メトロなどで採用されている高音質スピーカーに変更したそうです。なるほど確かに放送が高音質だ。そして、音響機器をあらかじめ車両に搭載しているようで、これによって音楽を流すことが可能とのこと。乗務員室にイヤホンジャックがあって、そこから音楽を流せるようです。なお、営業運転で走行中に音楽を流す予定はないとのことですが、臨時電車などでは活用できそうな機能です。

今後の動向

 30系500番台特別仕様車は2020年にももう1編成導入され、500番台として導入されるのはそれが最後とのこと。また、運用に関しては当面津古線とアーバンループ・花浜線専用で使うとのことで、営業運転で八田山線に入るのは当面無いとのこと。なお、試運転では12月17日に八田山駅まで入線しています。試運転の裏話として、LCDがきちんと動作するか確認するのが大変だったとのこと。機器類の試運転なら津古線内だけで済ませられるのですが、これがLCDとなると誤作動が無いか走らせて確認しなければなりません……

 入れ替わりで津古線から撤退するのは、80系0番台2編成の予定。すでに1編成は八田山線への転用改造(といっても帯の貼り替えだけ)を進めています。なお、花浜線用CBTCを搭載したままの転用とのことで、ダイヤが乱れたときに花浜線に入れるようになっているとのことです。

700番台

 2022年3月12日変更でデビューする車両で、ベイコネクト・東西線と湾岸急行電鉄線、NR内郷線で運行されます。三城総合車両センター所属の津喜線向け500番台10連を転用した車両で、編成構成は変わりません。

 転用工事は2022年1月から順次行われており、最終的に10連8本が海浜車両センターに集まる予定です。

 なお、2022年1月15日から、津喜線で700番台改造車の運用が開始されています。3月にベイコネクト線に転用する前提であることから、側面のラインカラーはすでに黄色(ベイコネクト線のラインカラー)に変更されています。乗り間違えを防止するため、前面のラインカラーは暫定的に津喜線のラインカラー、水色になっています。

1000番台

 2019年3月改正で営業運転を開始したグループで、長柄線区間運用や海千鉄道事業部への直通運転に対応するため、4両編成で登場しました。4両単独の運用もありますが、4両編成を2本連結した8両編成での運用の方が多く、北は津古線古林、南は外ノ瀬線外ノ瀬まで入線した経験があります。内装は30系500番台2018年度導入車に準じた仕様になっています。 

 2019年3月から2022年3月までは津喜支社の仁江車両センターに全編成が所属していましたが、2022年3月12日付けで全編成が福増総合車両センターに転属しています。

 2022年1月から3月までの間には、福増総合車両センターへの転属に備え、車体デザインが「両得色」に変更されました。それまでの八田山線・北萩線に加えて津古線で運用される場合もあり、ラインカラーは赤色となりました。

メモ

・津古線系統編成は、古林線東兵庫~古林間の入線が禁止されている。これは、編成の向きが古林駅基準で逆になってしまうからである。この区間への入線は問題ないものの、古林以北の区間では逆の状態で走行しなければならなくなるため、車両管理上問題がある。万が一の誤入線を防ぐための処置である。 

・両得本線系統編成は、津古線への入線が禁止されている。これも、編成の向きが古林駅基準で逆になってしまうからである。 

・2017年8月現在、500番台は古林線でも運行されていたが、両得本線編成と古林線編成を完全に使い分けるようにした関係で、古林線東兵庫~古林間で運行されなくなった。 

・津古線100番台(ロング・クロス転換座席車連結)は、朝夕ラッシュ時には2018年3月に開始された着席サービス車両(別料金)に使われている。二階建て車両とは異なり、「プラスカー」などといった名称は付けられていない。

・2020年度以降は両得本線、古林線に2000番台、仙豊支社に1000番台が導入される。特に両得本線を走る二階建て連結編成は、すべてが30系500番台、2000番台のどちらかに統一される予定。 

・前面の縦長ライトは、当初全部分をフルカラーLEDとする予定だった。実際には前照灯部分が輝度の高いLED、尾灯部分が2017年度車は3色LED、2018年度車はフルカラーLEDとなっている。 

Data

登場年 2015年

営業開始 2016年3月12日

製造メーカー 津喜車輌→津喜製作所

最高速度 120km/h

加速度 3.3km/h/s

常用最大減速度 4.5km/h/s

非常減速度 5.0km/h/s


※当ページの内容はフィクションです。

当ページ最終更新日 2024年01月04日