文学的沿線 結急津喜線

道場駅

 

 電車が地下から地上へ飛び出してくる。約200mの上り坂を登り切ると地上に出る、地上に出た地点から道場駅のホームが約200m続いている。相対式2面2線のホーム。駅舎は1960年代に建設され、何回かリニューアル工事を行っているが年季が入っている。駅のサイン・システムとLED照明の強い光は今時であるが、でも全体的な雰囲気は昭和で、アンバランスさが否めない。 

 

 ホーム津喜方。永京方面へステンレスボディーが走り去っていく。赤いテールライトは坂を下って地下へと消えていった。上へ目をやると津喜中央あたりのビルの明りがこの夜を照らしている。津喜火力発電所で発電された電力でこの光が輝いているのだろうか。 

 

 通過電車のアナウンスが流れると、電光掲示板に赤い文字が点滅する。この時間に通過するのは、急行の野手・桃志(ももし)行き。10系4100番台で運用されるこの電車は、このまま東へと走っていき富街、奈原方面へと走っていく。そして奈原でスイッチバックをするのだが、その際に永京・野手方6両とその後ろの4両を切り離す。前6両は野手から津久茂電鉄に入り、各駅停車として桃志へと向かう。後ろ4両は野手まで前を走る桃志行きを追いかけて、野手から堀川海岸駅へ向かう。この運用に使われる電車の特徴は、他の津喜線電車と異なり窓やドアの上の帯が水色ではなくオレンジ色であることだ。 

 

 しばらくして津喜駅で急行の待避と接続をしていた快速富街行きがやってくる。いつもは2階建て車を連結していない10系0番台がやってくるのだが、今日だけは30系500番台(2階建て車連結)がやってきた。2階建て車は各駅停車、快速の運用では無料開放されるが、急行運用の場合は別に料金を支払わなければならない。 

 

 津喜線で運転士をしている人が結急の動画チャンネルで語っていたことがある。この道場駅に下り電車の運用で停車する際は、上り坂を登り切ったところが駅なので、ブレーキの調整が難しいという。早めにブレーキをかけてしまうとかなり手前に止まりそうになる。それどころか惰行していても自然に減速するので、若干加速しながら速度を落とさないように上り、坂が終わる少し手前で加速をやめる。そうすると電車はじわじわと減速するので、停止位置にある程度近づいたら少しブレーキを強めてゆっくりと停車する。 

 

 今の電車はある程度の速度では定速走行が可能となっているが、昔の電車は今の電車よりもブレーキの調整が難しく、また車両による「走りのクセ」というのも今以上にばらつきがあったので、新人は思ったより手前で止まりそうになることがしょっちゅうあった。これは令和の今でもあまり変わっていないようで、やけにゆっくりと停車することがよくある。 

 

 結急では津喜線にホームドア設置を進めているが、その一環として「定位置停車支援装置」の導入が進められている。装置が停止位置に止まりきれないと判断した場合、きちんと停止位置に止まるようブレーキを自動的に調整するというもので、すでに津喜よりも永京方の区間ではこのシステムの稼働が開始されている。津喜よりも奈原方の道場駅ではまだ稼働開始されていないが、2022年3月ごろから順次導入されるとのことだ。動画に出ていた運転士は「はやく定位置停車支援装置が道場駅に導入されればいいのに」と言っていた。 

 

 駅舎は永京方の南側にある。隣にはスーパーがあり、このスーパーと駅舎が同じ時期に建設されたからなのか見た目が似ているのだ。最初の計画ではもう少し小さい駅舎にする予定だったが、隣のスーパーに対抗して、結局スーパーと同じサイズの駅舎を建設してしまった。当時の両得電鉄の社長が、スーパーの社長と同じ大学の同級生だったらしく、変にライバル意識が出てしまったという…… 

 

 駅舎の中にはNR今北と結急電鉄の駅構内にある緑色の売店があるほか、散髪屋と待合スペースが設けられている。待合スペースといっても、ここは電車が昼でも7分30秒おきにくる大都会の駅なので、わざわざ座って電車を待っている人は少ない。もっぱら近所のお年寄りの集いの場所となっていたようだが、昨今はそのような光景を目にすることが少なくなって、寂しい。 

 

 片隅には駅舎の屋上へ向かうことができる階段とエスカレーターが設けられている。屋上は特に何かがあるわけではないのだが、時折バーベキュースペースとして解放されたり、ご当地のキャラクターとふれあえるイベントが催されたりする。一般客の目から見てもとても変わった作りの駅舎なのだが、この駅舎が建設された当時の社長も「ちょっとやり過ぎた」と反省していたようである。 

 

 2021年9月からはホームドアを将来的に設置できるよう、準備工事が進められている。道場駅のホームの永京方は盛土なので、そのままではホームドアの重みに耐えられない。そこで、骨組みを追加してホームドアの重みに耐えられるようにする工事が行われている。同時にホームの床のアスファルト舗装を新しくする工事も進められていて、ホームの一部分だけはやけに綺麗になっている。

 

最上階

#東兵庫駅

 

 タワマンの最上階の景色ってどれぐらい綺麗なんですか??

 今目の前に広がっている景色は、お金さえあれば独り占めできるごく単純な最高の景色。でもせっかくの広い部屋に私一人しかいないのは寂しいよ。イケメンの医師免許持ってる高収入の彼氏が欲しいけれど、中々捕まえられないの。良い感じになっても妙な違和感を覚えてしまってさ。

 

 今目の前に広がっている、タワマンの最上階の景色ってもっともっと綺麗になるはずだよね。なんでこんなに最高の場所に住んでいるのに、寂しさしか感じられないんだろう。だって、頑張って勉強して良い会社入って、まだアラサーなりたてなのに凄い稼いでいる私だよ。この私にはもっと綺麗で感傷的になるような眺めこそがぴったりだと思うんだけど。

 

 中学生ぐらいの頃から思い描いていたストーリーをそのまま再現できた私は、素晴らしい才女だと思うんだけどなんで違う女のところに行ってしまうの??

 

 ペンを片手に夢へ挑み、札束を手にして自信を高めていった我が人生は、資本主義社会においてお手本になるような素晴らしい人生だと思うんだけど。これこそが現代の幸福だと信じているんだけど。

 

 ネットサーフィンしていたら「承認欲求よりも心と心が通じ合うことの方が大切だから、苦手なことが多くてもお金を稼げなくても貧乏でも、私たちは最高に幸せ」っていう夫婦のインタビュー記事をたまたま見つけてしまって、とんでもなく劣等感を感じた。私、なんで夫婦揃ってしょぼい低収入の仕事しかしてなさそうな夫婦に劣等感感じているの。だって、収入多くて高学歴で、私、タワマンの最上階に住んでいるのよ。

 

 ブランド物のバッグ、高い香水、そして自分磨きにジムでトレーニング。興味のないクラシック音楽を、最近気になっている人に話を合わせたいから聴いたり調べたりしている私って努力家でしょ??

 

 でもなんでなんだろう。なんで私は成功者なはずなのに劣等感を感じているの??

 タワマンの最上階の景色ですら満たされなくなってしまった私は、

 札束ではどうにもできないものが一番欲しい。

 

あなたはかなた

#津喜県 #結急津喜線三城駅

 

 切ない気持ちを断ち切れないまま

 ただ「詩人になりたい」という気持ちを

 漠然としたまま放置していた頃の記憶が

 僕の背中を押している

 

 あなたと出会って今年で9年目だ

 ハッピーエンドを迎えることはできなかったけど

 これから海の向こうに行って詩集を出すんだ

 まだ会ったことない人に読んでもらうんだ

 本当は君に読んで欲しかったんだけど

 

 君がこの詩集を読む日は

 きっとやってこないんだろう

 

 あなたはかなた

 

結急津喜線富街駅

 

 駅の近くに老舗の和菓子屋があって、昔からそこの和菓子を食べるのが好きだ。津喜県富街市。有名な国際空港「富街空港」のあるその富街の中心は富街駅だ。永京に行くには少し遠いが、津喜あたりなら普通に通勤圏内で、寺井や成東に行くNR富街線も「本数が少ない」とよく言われているものの、一応30分ぐらいの感覚で列車がやってくる。悪くはない。ただ、娯楽があまりないのがやだ。

 

 富街の憩いの場は「けやきの森」と呼ばれている公園で、今日は晴れているので久々に大福をほおばることにした。駅のGnu Daysで買った小さいお茶と共に。今日の目的はけやきの森で大福を食べることじゃなくて、あと30分ぐらいすれば親友がここにやってくるのだ。久しぶりにボウリングをする約束をした。

 

 今日の親友は大福のような上品だけど甘めなコーデだった。富街あたりの娯楽といえばカラオケとボウリングぐらいで、そういやボウリングを最近していないねという話になってすることになった。

 

 ボウリング場まで15分くらい。女子トークが盛り上がる。甘い恋愛をしたいという話で盛り上がるも、お互い二次元こそが理想で三次元にさほど関心を持てないのだった。

 

 二次元は画面から出てこないのが寂しい。三次元で大福のような上品で甘い恋愛、したい。


※当ページの内容はフィクションです※

当ページ最終更新日 2023年09月23日

当ページ公開開始日 2023年09月23日